2024.1.26
NEWS
新年の仕事始め(木槌)
私はこれまで鉋の調整に金槌を使ってきました。微妙な刃の出し入れのためですが、ある時、丹精込めて作る鍛冶屋さんの姿勢を実際に見て、多くの職人さんが言う、金槌でなく木槌を使って鉋の刃を傷めないようにするものだという主張もよく分かりました。
ある大工さんに、金槌で叩いて鉋刃の頭を潰すような奴には、美しい仕事はできないと言われましたが、これには疑問が残りました。長い間金槌で叩かれて変形した姿は、使い手が残した試行錯誤の痕跡で、私には美しいと思えるからです。道具を見れば仕事の技量が分かると言いますが、変形のない鉋刃が美しくて、使い込んで変形したものが醜く、さらにそれをもって仕事の内容を類推するのは偏狭だと思います。美しさは多様だからです。
そんなことを思いながらも、年末年始にかけてオリジナルの木槌を作ってみました。樹種は密度の高い重いものを使い、打撃面は曲面にして、もう一方は裏金を叩く人のために角の立った平面にしました。柄は軽い材料を使って薄く細く削って打撃力が伝わりやすくなることを考えました。こうして、10種ほどの堅い木を選び、槌の形や持ち手の長さを考え、大小25本の木槌ができました。
BY HANDギャラリーと東京の井上刃物店に置い ていただいております。